研究概要 |
野生種から現代の栽培種を含むオオムギ60品種余りを選択し、栄養成長期の上位展開葉および生殖成長期の上位葉,止葉,亡をサンプリングし,グルタミン合成酵素の2つのアイソザイム(GS1,GS2), Rubisco,可溶性タンパク質,クロロフィル量の品種間変異を解析した。得られた知見は以下のようであった。 1.出穂時の止葉および上位展開葉の可溶性タンパク質,Rubisco,GS1,GS2量,クロロフィル量は野生種を含む大多数の品種で,下位葉ほど明らかに減少した。総GS量に占める各GSアイソザイムの割合は,野生種ではGS1,が止葉から下位葉にかけて,ほとんど変化しないか,あるいは減少するのに対して,栽培種では逆に大多数の品種で増加した。これらのことにより,止葉から下位葉にかけてのGS1/GS2比の変動様式が野生種と栽培種を特徴づける指標の1つとなり得る可能性の高いことが強く示唆された。 2.野生種を含む大多数の品種において,芒,止葉,上位第1葉の可溶性タンパク質,Rubisco量は時間の経過と共に減少する傾向を示した。GSアイソザイム量はほとんどの栽培種において経時的に減少したが,雑草的形態の強い野生種では3週目まで増加した。 3.第1週目と第4週目の止葉と上位第1葉における可溶性タンパク質量は収量が高い品種ほど高くなる傾向を示した。また第2,3週目の止葉,第2週目の上位第1葉におけるRubisco量と収量との間には正の相関があった。これに対して,第2週目の止葉,上位第1葉におけるGS1量と収量とでは高い負の相関を示した。以上の結果,オオムギの収量と止葉,上位第1葉におけるGS1量,Rubisco量,可溶性タンパク質量とは密接に関連していることが示唆された。
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