本年度の研究において得られた成果は次のように要約される。 1.ファイバーに含まれているヘミセルロース成分(ほぼキシランのみから成っている)の抽出条件を種々検討した結果、5%KOHによる抽出がもっとも効率的である結果を得た. 2.このキシランを基質として、当研究室で分離した糸状菌F-9株が生産する数種のキシラナーゼによる分解反応の結果、これらのキシラナーゼの中にキシロビオース、キシロオリゴ糖を優先的に生成する酵素が含まれていることがわかった。 3.ファイバーのセルロース資源としての評価のため、脱リグニン処理したファイバーの糖化に適した酵素剤として市販の酵素剤の中からセルラーゼ・オノズカを選定し、それによる酵素糖化の最適条件を設定した。 4.上記のグルコースとキシロースの混液である糖化液の微生物培養基としての利用を検討したところ、両糖を資化できる酵母(Candida utilis)の培養で有効な結果が得られた。 以上のように、廃棄物であるパームファイバーがキシラン源として有用であり、このキシランより機能性オリゴ糖として注目されているキシロビオースやシロオリゴ糖が得られることがわかった。今後、さらに収率や生産性などの検討を行い、ファイバーのキシロオリゴ糖資源としての実用性を評価する予定である。 一方、ファイバー全体をセルロース資源として捉え、その糖化液が飼料酵母であるCandida utilisの培養基として有望であることが示唆された。現段階ではまだ糖化液中の糖濃度が低いなどの問題点があり、パームファイバーの微生物培養基としての有効利用を目指して、さらに鋭意研究を続行中である。
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