我々の開発したBacillus brevisを用いる宿主・ベクター系によって、複数のジスルフィド結合を有するヒトや動物のタンパク質を効率よく分泌できることを示してきた。従って、この系においてジスルフィド生成酵素は、巻き戻されたポリペプチド鎖が生体膜を通過後に生物活性のある正しい立体構造を形成するのに重要な役割を果たしていると考えられる。そこでジスルフィド生成酵素の遺伝子のクローニングを行い、酵素の性質を明らかにした。 大腸菌のべん毛の運動活性を回復するDNA断片をB.brevisより得ることによって、B.brevisのジスルフィド生成酵素(一般名タンパク質 チオール・ジスルフィド オキシド レダクターゼ、Bdbと略す)の遺伝子をクローン化した。本遺伝子のヌクレチオド配列並びにアミノ酸配列より、酵素の活性部位と考えられるCGYC配列を一個有すること、細菌のチオレドキシンに最も類似する(約30%の相同性)が他のジスルフィド酸化還元酵素とのホモロジーはほとんど無いことが分かった。本酵素をB.brevisで高発現したところ、ほとんどの活性は培養上澄液中に見いだされた。精製した酵素はインスリンのジスルフィドに対する還元反応、還元したリボヌクレアーゼにたいして、チオールの酸化的折りたたみ反応をしめした。また、精製酵素に対する抗体を用いて、B.brevisの生成するbdbは細胞表面に局在することが示された。また、B.brevisの染色体上のBdb遺伝子を破壊して、その機能を検討した。 分泌後のポリペプチドの折りたたみに大きな役割を果たしていると考えられるペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼの酵素作用について種々検討を加えたが、その遺伝子のクローン化には成功しなかった。
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