タバコでは低ニコチン品種が報告されており、Nic1、Nic2というsemi-dominantな二個の遺伝子がニコチン生合成経路の発現を調節している。我々は、二つの変異をホモに持つ変異体でその発現が特異的に抑制されている2つのcDNAクローンを既に単離している。その1つがニコチン生合成経路の初発酵素、プトレッシンNメチル基転移酵素(PMT)をコードするcDNAであった。本研究ではNic遺伝子によるニコチン生合成経路の調節機構の解明を目的に、その制御下にあるPMT遺伝子の単離を行った。 Nicotiana sylvestrisのゲノミックライブラリーから5個のゲノムクローンをスクリーニングし、制限酵素地図の比較からそれらのクローンを3グループに分類した。まだ、ゲノミックサザンハイブリダイゼーションの結果からも、N.sylvestrisには3コピーのPMTに相同性のある配列が存在することが示された。 次に、PMTcDNAの3'非翻訳領域をプローブとして使用しサザンハイブリダイゼーションを行ったところ、タバコで発現しているPMTcDNAに対応するグループが判明した。また、ノーザンハイブリダイゼーションにより、N.sylvestrisにおいても対応する遺伝子が根で発現していた。そこで、このN.sylvestris PMT遺伝子の解析をおこなった。翻訳開始ATG上流2.7Kbpを含む全長5.4Kbpの塩基配列を決定した。その結果、PMTcDNAと非常に相同性が高く、前述した3'側も高い相同性が確認された。ATG上流-113bp〜-119にTATAのコンセンサスと予想される部位も確認され、本遺伝子が発現していることが強く示唆された。また、プロモーター領域をレポーター遺伝子と連結した植物形質転換用のベクターを構築した。
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