本研究により以下のことが明らかとなった。 1.マウス卵胞顆粒層細胞にみられるギャップ結合(GJ)の機能蛋白(コネキシン、Cx43)の細胞内合成は、粗面小胞体(RER)で行われ、その後ゴルジ装置を経て小胞膜によって形質膜へ輸送されると思われるが、これを証明するCx43抗体の免疫形態学的結果は得られなかった。本研究では、むしろRERに由来する小胞膜が直接Cx43を形質膜まで輸送する可能性が示唆された。 2.卵胞の閉鎖は顆粒層細胞のアポトーシス細胞死によっておこるが、その初期過程において、小胞体結合型および複合型のリボソームが減少するとともに自由リボソームが増加し、核質の濃縮化が次第に顕著になる。また、核質の濃縮化は、DNAの断列を伴う。 3.顆粒層細胞間に形成される発達したGJは、アポトーシスの発現とともに隣接する正常細胞によって一方向性に取り込まれ、その後変性・分解される。これは、アポトーシスに陥った細胞がアクチンを主とする細胞骨格系の正常な構造と機能を失うことによる。 4.アポトーシスに陥った細胞の核内には、アクチンとみられる微細線維束の出現が認められ、この構造は細胞死に伴う細胞の形態変化に深く関与している。 5.性的成熟前のマウス卵巣に対する妊馬血清およびヒト絨毛性ゴナドトロピンの投与は、明らかに卵胞の閉鎖を抑制し、多数の卵胞を同時に成熟させる。このことから、マウス卵胞の顆粒層細胞は、アポトーシス機構の解明に有利な形態学実験系として期待される。
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