1.認識する精母細胞の種類:得られたモノクローナル抗体を用いてマウス精巣の凍結切片を免疫染色し、どの時期の精母細胞を認識するかをみた。ヨウ化プロピジウムで細胞核と二重染色し、共焦点レーザー顕微鏡で観察することにより、各精細管の断面のstageを特定できた。その結果、抗体10B3は中期から終期(stages VI-X)のパキテン期精母細胞を、抗体10D6はレプトテン期から初期(stages I-IV)のパキテン期精母細胞を、抗体12F7は後期(stages VII-VIII)のパキテン期精母細胞を特に強く染色することがわかった。また、精巣を酵素処理して単離した精細胞を免疫染色する事により、これらの抗原は細胞表面に存在するらしいことがわかった。このことはpost-embedding法による金コロイド免疫電顕により確かめられた。このように、各モノクローナル抗体がいろいろな時期の精母細胞の細胞表面を認識することが確認された。したがって、これらの抗体を用いて各時期の精母細胞の詳細な解析が可能ではないかと期待される。 2.抗原の生化学的性質:各モノクローナル抗体を用いてウェスタンブロット法により抗体の分子量を求めた。抗体10D6および12F7は残念ながら反応が見られなかった。おそらく抗原の変性によりエピトープが認識されなくなったためであろう。エピトープがタンパク質でなく糖鎖等の可能性もあるので、今後検討したい。抗体10B3は二次元ウェスタンブロット法により分子量役50kD、pI5.5の単一のスポットを認識した。
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