研究概要 |
1.我々の作製したモノクローナル抗体3種を用いて,マウス精巣及び精巣から遊離させた造精細胞を免疫染色し,蛍光抗体法・免疫電顕法で観察した.抗体10B3は中期から終期(stage VI-X)のパキテン期精母細胞,抗体10D6はレプトテン期から初期(stage I-IV)のパキテン期精母細胞,抗体12F7は後期(stage VII-VIII)のパキテン期精母細胞の表面を認識することがわかった。 2.抗体10D6と12F7は精巣上体尾部精子の頭部表面膜の特定の部位をも認識した.そこで,in vitro fertilizationを行い,培養液中に各抗体を添加してみたが,明白な影響は認められなかった.従って,これらの抗原は受精とは直接関係しないようである. 3.ウェスタンブロット法により,各抗体が認識する抗原の分子量を調べた.抗体10D6と12F7は残念ながら反応が見られなかった.抗体10B3は二次元ウェスタンブロット法により分子量約50kD,pI5.5の単一のスポットを検出した. 4.精母細胞やgonocytesの培養を試みたが,これまでに報告された以上の成果は得られなかった. 5.突然変異マウスisdは,成熟初期に一度精子形成が行われた後精子形成能を失い,精巣は萎縮していく.isdマウスの萎縮しつつある精巣をこれらの抗体で免疫染色したところ,残存する精母細胞を認識した.よって,これらモノクローナル抗体は精母細胞のマーカーとして有用であることが示された. 6.精母細胞は成熟するにつれ,精細管の基底部から内腔へと移動する.この際,アクチンフィラメントを始めとする細胞骨格系タンパク質が何らかの役割を担っていることが考えられる.そこで,精細管内のアクチンフィラメントやアクチン結合タンパク質の分布について調べた.その結果,アクチンフィラメントの配列は,精巣の発育につれ変化した.また,実験的停留精巣を作り精子形成を阻害すると,フィラメントの走行も乱されることがわかり,精子形成能との関連が示唆された.
|