研究概要 |
本研究はin vivoにおける血管およびリンパ管新生機構の形態学的解明を目的とし,本年度は特にリンパ管新生および,その血管新生との関連を解明することに重点をおいて研究を行った. Compound 48/80をラット腹腔内に投与すると,腸間膜に血管が盛んに新生され,引き続きリンパ管も新生されることが明らかとなった.抗IV型コラーゲン抗体で染色し,共焦点レーザー顕微鏡で観察すると,血管の基底膜が明瞭に見え,リンパ管の基底膜も弱いながら観察できることが明らかとなった.リンパ管新生には,血管と同様,先端の閉じた芽として既にあるリンパ管から新生するものと,既存のリンパ管から離れて島状に形成されるものとがあった.新生リンパ管は太さが不規則で,新生されたばかりのものでも弁様構造を持っていた.また,リンパ管に向かって,既に形成されている血管から新生血管の芽が伸び,しばしば接している像が見られた.この場合,周皮細胞も新生血管とリンパ管の両者に跨るように存在していた.透過電子顕微鏡観察により,新生リンパ管と新生血管の基底膜が共有されるまで接近しているが,リンパ管と血管の吻合は認められなかった.このことは,新生血管の芽が新生中のリンパ管に接することにより,血管とリンパ管の位置関係を一定に保つためと思われた.なを,リンパ管新生に際して,内皮細胞が如何なる挙動を示すかは,モノクローナル抗体B27(熊本大学医学部解剖学,江崎太一氏の提供による)を用いて研究中である.また,本研究はcompound48/80を用いた実験であるので,今後正常状態および発癌状態でのリンパ管新生について研究すべきであると思われる.
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