視興奮は視物質のみで成立するのではなく、G蛋白はじめ脱燐酸化酵素(PDE)などの情報伝達系蛋白およびチャンネル蛋白の存在なしにはありえない。視細胞の発育過程において視物質、情報伝達系蛋白、チャンネル蛋白ちがどのような順序で発現され、それぞれの持ち場に輸送されるかを知ることは視細胞への分化や視覚の成立過程を明らかにするうえで極めて重要である。とりわけ、視興奮は形質膜に視細胞特有のcGMP依存性のカチオンチャンネルが存在することで成立するので、視細胞の発生に伴うチャンネル蛋白の動態は大変興味深くまた重要である。本研究はこのチャンネル蛋白が錐体視細胞の発生のいかなる時期に発現され、またどのように形質膜に組み込まれていくのかを微細構造レベルで明らかにするために計画された。特にチャンネル蛋白が視細胞外節形質膜だけに存在するのか、あるいは内膜系である円板膜にも含まれるのかは形態形成と機能分化との関連から重要である。ニワトリ錐体視細胞のカチオンチャンネルのC末に対する抗体を用いた免疫細胞化学法による実験では、標識は15日胚より出現し、主に外節形質膜と円板膜にあらわれた。発育とともに標識の密度は上昇するが孵化以降は変化は少ない。チャンネルが形質膜だけではなく円板膜にも存在するという事実は興味深い。即ち円板膜に存在するチャンネルは機能しないのか、あるいは円板腔にもNaやCaイオンが存在し、それらがチャンネルの開閉により出入するのかという問題が生じる。明順応が速やかに行われるためには後者の考えが支持されるかもしれない。
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