研究概要 |
生体のタンパク質の約30%を占めるコラーゲンは、細胞外基質の主要な構成成分であり、その種類もI型からXIX型に及ぶ。VI型コラーゲンは組織では分子集合体を作り、約100nm周期のビーズ状線維として電子顕微鏡観察される。組織を産生ATP溶液中でインキュベートすると、ビーズ状線維が分子をそろえて横並びに集合し、100nm間隔の周期構造を持つ幅広い線維になる。またVIコラーゲンはプロテオグリカン(PG)、グリコサミノグリカン(GAG)、コラーゲン細線維など他のマトリックス分子と協同して組織構築に与るが、その関与の仕方は組織により異なる。さまざまな生体組織でこの関与の仕方を調べた。 VI型コラーゲンの体内分布様式より考えられる他の分子との相互作用の多様性は、コラーゲンタンパク質の非ヘリックス部にあると考え、VI型コラーゲンを精製し、VI型コラーゲン分子とPG,GAGとの相互作用を調べた。PGやGAGを特異的に消化する酵素であらかじめ組織を処理すると、角膜では、VI型コラーゲンは線維形成性コラーゲンから離れて存在することから、VI型コラーゲンはPGを介して線維線維形成性コラーゲンと相互作用していることが明らかとなり、このPGはデコリンであることが示された。軟骨をおおう関節幕ではVI型コラーゲンは独自で組織間隙を構成し、ヒアルロン酸と強力に結合していることが示された。胎盤ではVI型コラーゲンはトロホブラストの基底膜に近接して存在していた。さらに、VI型コラーゲンは分子の両端の非ヘリックス部が非対称性にS-S結合し、これにPGやGAGが加わって他のマトリックス分子との相互作用が可能になることが明らかとなった。
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