神経筋接合部と筋紡錘の形態形成に関して、生後ラット骨格筋を用い、通常の透過型電子顕微鏡で観察すると共に、両者の形成に及ぼす神経性細胞接着因子(N-CAM)と塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)との相関について免疫電子顕微鏡的手法を用いて観察を行った。 生直後では、運動終末は多神経支配であり、終末に面する筋細胞形質膜(神経下装置)はほとんど分化しておらず、数個の短いシナプス下ひだが存在するに過ぎない。生後15日に至ると、運動神経は徐々に減少し一本の終末になる傾向にあり、神経下装置には増加したシナプス下ひだを含む深い陥凹が形成され、複雑な形態をとるようになる。一方、生直後の筋紡錘においては、紡錘鞘と錘内筋線維とは密接しており、錘内筋線維も互いに対合し、その外周に知覚終末が散在している。徐々に紡錘鞘と錘内筋線維との間に間隙ができ分離すると共に、錘内筋線維も基底板や内紡錘鞘の出現により個々の筋線維に分かれ、知覚終末は帯状になり筋線維の外周を取り巻くようになる。 免疫電子顕微鏡観察において、bFGFの局在は生直後から生体に至るまで運動及び知覚両終末に認められ、筋線維間の線維芽細胞や筋紡錘の紡錘鞘を構成する細胞もbFGF陽性である。生直後においては、筋芽細胞や筋筒細胞もbFGF陽性であったが、筋紡錘を構成する錘内筋線維はbFGF陽性を示さなかった。一方、N-CAMの局在は、生直後より運動終末と筋形質膜との間のシナプス間隙にわずかに観察されるが、知覚終末と錘内筋線維間では必ずしも明白ではなかった。 錘外及び錘内筋線維は同じ起源であるが、錘外筋線維が成体になるまで成長し続けるのに比べ、錘内筋線維は生後間もなく成長が止まり、成体になるまで幼若な状態を保っていることが示唆される。このことは知覚終末が影響していると思われるが明らかにすることはできなかった。
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