1.ラット副腎髄質細胞におけるカルシウムオシレーション(Ca振動)の発生機序とGABAによる装飾 ラット副腎髄質細胞にCa蛍光色素、Fura-2を負荷して細胞内Caイオン濃度(|Ca^<2+>|i)を測定したところ、過半数の細胞が自発性にCa振動を示した。このCa振動は細胞外Ca除去あるいはCaチャネルブロッカーによりすみやかに消失した。さらに副腎髄質細胞ならびにその支配神経終末に存在するγ-aminobutyric acid(GABA)を作用させたところ、一過性の|Ca^<2+>|iの上昇に引き続き持続性のCa振動の抑制が観察された。GABA_A受容体アゴニストであるmuscimolは同様の作用をひき起こし、GABA_B受容体アゴニストであるbaclofenは|Ca^<2+>|iに影響を与えなかった。さらにGABAの|Ca^<2+>|i上昇作用は細胞外のClイオン濃度減少によって増強された。以上の結果よりラット副腎髄質細胞の自発性Ca振動は自発性のCaの流入に強く依存すること、さらにGABAによってGABA_A受容体が活性化し、膜電位がClイオンの平衡電位に近づくことによりCaイオンの流入が抑制されることが示唆された。 2.牛副腎髄質細胞におけるPACAPの分泌刺激機序 副腎髄質に多量に存在し、カテコルアミン分泌を刺激するPACAPの分泌刺激作用をFura-2法による|Ca^<2+>|i測定、ならびにwhole-cell patch-clamp法による膜電流測定により検討した。PACAPは濃度依存性(1-1000nM)に|Ca^<2+>|iを増加させた。この|Ca^<2+>|iの増加は二相性であり一過性のピークとそれに引き続く持続性のプラトー相であった。細胞外Ca除去によりプラトー相は完全に抑制されたが初期相は影響を受けなかった。この初期相は細胞外Ca除去に細胞内Caストアの枯渇を起こすthapsigarginを組み合わせることにより強く抑制された。さらに膜電位を-80mVに固定してPACAPを作用させるとプラトー相にほぼ一致した時間経過で持続性の内向き電流が観察され、これは細胞外Na除去により強く抑制された。これらの結果からPACAPは細胞内Caストアからの一過性のCa放出とnon-selective cation channelsを介した脱分極による持続性のCa流入を引き起こすことにより|Ca^<2+>|iの増加をもたらすことが示唆された。
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