研究概要 |
Hering‐Breuer反射の延髄内神経回路を明らかにするために、この反射回路の2次性介在ニューロン(ポンプ細胞)の活動を孤束核より記録・同定した。ポンプ細胞は人工呼吸器による圧変動に同期して発火し、人工呼吸器を止めると発火が休止する。順行性または細胞内トレーサーであるNeurobiotinをポンプ細胞内(n=4,4‐30nA・min)または細胞近傍(細胞外誘導部,n=8,3‐15μA・min)にイオン泳動的に注入し、一定期間生存させた後、経心臓的に潅流固定した。50μmの厚さの連続切片を作製し、HRPを用いた免疫組織化学的手法によりNeurobiotinを発色させ、ポンプ細胞の局在及び軸索の投射部位を顕微鏡的に固定した。 ポンプ細胞は筆尖より頭側0.25‐0.75mm、正中線より0.7‐1.0mm外側、表層より0.4‐1.1mmの深さに局在し、孤束に対して内側または腹外側に位置した。細胞体は卵形(平均31×20μm:長径×短径)であり、stem dendriteの数は2‐3本であった。軸索は同側の背側呼吸ニューロン群(VRG)に投射していたが、対側への投射は認められなかった。VRG内での投射部位の局在では、Botzinger complexが最も密であったが、Pre‐Botzinger complexやrostral‐VRG(筆尖より0.2‐0.5mm以上頭側のレベル)にも密に分布していた。caudal‐VRGへの投射は確認出来なかった。軸索は疑核に対しては、主に腹側と背内側に終末し、また一部は直接疑核内に進入し疑核の細胞とシナプス結合している様な所見を認めた。Axoncollateralは確認できなかった。これらの結果よりVRGを構成する呼吸ニューロンがHering‐Breuer反射の3次性介在ニューロンであることが示唆された。
|