背側呼吸ニューロン群(Ventral Respiratory Group : VRG)を構成する呼吸ニューロンの迷走神経電気刺激と肺伸展に対する反応をウレタンまたはネンブタール麻酔下の非動化ラットを用いて検討した。膜電位軌跡と発火パターンにより、呼吸ニューロンは3種類の吸息ニューロン(漸増性、漸減性、平坦型)と2種類の呼息ニューロン(漸増性と漸減性)に分類しえた。漸減性呼息ニューロンのなかに、吸息-呼息の切り替えの直前から直後にかけて短期間(100ms以下)発火する細胞があり早期発火型漸減性呼息ニューロンと名付けた。Hering-Breuer反射は肺伸展(7.5cmH_2O、n=33)により誘発し、また迷走神経の反復電気刺激(50Hz、n=30)によりこの反射を模倣した。肺伸展及び反復電気刺激により全ての吸息ニューロンと漸増性呼息ニューロンが抑制された。全ての漸減性呼息ニューロンは迷走神経の反復刺激により脱分極し(n=5)、また肺伸展により大部分(13/17)の漸減性呼息ニューロンは脱分極したが、4個のニューロンは抑制された。迷走神経反復刺激により1個の早期発火型漸減性呼息ニューロンは抑制されたが、他の一つは興奮した。迷走神経刺激は漸減吸息ニューロンと漸増性呼息ニューロン以外の型のニューロンにEPSPを誘発した。EPSPは潜時により2群に分類しえた(2.8±0.1ms、n=10 : 4.0±0.1ms、n=17)。迷走神経刺激によるIPSPは漸増性及び平坦型の吸息ニューロンで観察された(4.8±0.1ms、n=12)。以上の結果は漸減性呼息ニューロンや早期発火型漸減性呼息ニューロンがHering-Breuer反射回路における抑制性の介在ニューロンの役割を担っているという仮説に合致する。
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