研究概要 |
1.ナトリウム利尿ペプチドによる軟骨細胞の増殖抑制:ラットの剣状突起由来の軟骨細胞を培養し,そこに存在する受容体のサブタイプを同定すると共にその生理機能について検討した。ANPイソペプチドによる競争阻害結合実験およびアフィニティーラベリングにより,軟骨細胞にはC型受容体が大量に存在することが明らかになった。(0.45pmol/mg protein)。また,B型受容体による強力なcGMP産生も確認された。^3H標識チミジンをトレーサーとして用いてANPの軟骨細胞増殖への効果を調べたところ,B型受容体を介した増殖阻害が観察された。また,C型受容たいおいては,組織では発現していないが培養系に移すと大量に発現し始めるサブタイプスイッチングの現象も発見している。 軟骨膜におけるエンドセリンA型受容体の局在と生理機能:ナトリウム利尿ペプチドとは相反する生理作用をもつエンドセリンの受容体サブタイプの軟骨組織での局在とその働きを調べ,ナトリウム利尿ペプチド・受容体システムとの相互作用を検討した。オートラジオグラフィーの結果からエンドセリン受容体が軟骨膜に高レベルで発現していることが確認された。軟骨細胞,軟骨マトリクスには銀粒子がほとんど存在していなかった。サブタイプ特異的なリガンドであるBQ123(A型受容体アンタゴニスト)とBQ3020(B型受容体アゴニスト)を用いて調べたところ軟骨膜のエンドセリン受容体は主にA型受容体であることが判明した。またエンドセリンは軟骨組織の増殖を促進した。以上のように,軟骨細胞へ分化する能力をもつ軟骨膜の細胞にA型受容体が存在し増殖・分化に関与していることが示された。ナトリウム利尿ペプチドの結果と考え合わせるとナトリウム利尿ペプチドとエンドセリンが軟骨組織の増殖を微妙に調節して組織を維持していると考えられる。
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