研究概要 |
1)平滑筋における内向きイオン電流が、どのように細胞膜の自動興奮を引き起こすのかということは、生理学において重要な問題であるが、これまで明らかにされていない。そこで、単離平滑筋細胞を用いて、内向きCa電流の諸性質を調べた。当年度では、特にシングルチャネル記録に重点を置いた。 2)ピペットに50-100mMのBaを入れ、セルアタッチの状態でシングルチャネル電流を記録した。セルアタッチの状態で、細胞電位を一定とするため、細胞外のK濃度を100mMとした。また、外液からのCa流入を避けるため、細胞外液からCaは除かれた。(通常、細胞外のNaを全てKで置換するため、細胞外液のK濃度は約140mMとなるが、平滑筋では、この状態で細胞内アシドーシスがおこり、Caチャネルのavailabilityが低下するため、約40mMのNaを外液に残した。) 3)この状態で、高脱分極パルス(+80mV,5sec)を与えた後、再分極させると、かなり長期にわたって開口するシングルチャネル電流が記録された。このことは、平滑筋Caチャネルに第二の開口状態があることの直接証明となった。高脱分極パルス中では、Caチャネルは開口状態にあるが、Caイオンの内向き電気化学勾配が小さいため、直接観察することは困難であった。しかし、高脱分極パルスを与えた後、ランプ波を用いて再分極させることによって、Caチャネルが持続的に開口していることが推定された。そして、シングルチャネルコンダクタンスが、第二の開口状態でも通常の開口状態とほぼ同様(22-30pS)であることが分かった。(論文投稿中)
|