研究概要 |
筋収縮はミオシン頭部(S-1)とアクチンフィラメントの間でATP分解を伴うサイクリックな反応によっておこる。従来、S-1にATPase活性およびアクチンとの結合部位が局在することから、S-1が筋収縮において主たる役割を担うと考えられてきた。したがってミオシンサブフラグメント2(S-2)はミオシン頭部とミオシンのバックボーンをつなぐ単なる受動的なバネとみなされてきた。しかし、筋収縮におけるS-2部の機能に関しては実際明らかになっていない。そこで本研究は、種々の収縮特性およびATPase活性を調べることにより、筋収縮におけるS-2部の機能を探ることを目的とした。これまでの抗ミオシンS-2抗体はミオシンS-2部の全域からLMM部にまで結合することがわかり、S-2部の特定部位にのみ結合する抗体を作るために、hinge領域に存在する20アミノ残基からなるペプチドを合成し、これを抗原とした抗S-2hinge抗体(IgG)を作製した。 まず抗S-2hinge抗体(IgG,3mg/ml)のヘビーメロミオシンとの結合性を電子顕微鏡下で観察したところ、hinge領域付近に比較的sharpな分布を示した。しかし、これよりFabを調整するとFabの処理過程に必須なpapainの残存を避けられずSDSパターン上問題をおこすため、IgGのままで用いその効果を調べることにした。 抗S-2hinge抗体(IgG,3mg/ml)を1)弛緩筋線維に作用させると収縮張力およびstiffnessを減少させるがATPase活性は変化させない。しかし収縮張力とsiffnessの減少の程度はこれまで完全抑制していた抗S-2抗体(IgG)と比較して少ない。2)硬直筋線維に作用させると収縮張力およびstiffnessはほとんど減少しない。以上の結果はミオシンS-2部のhinge領域は収縮特性に大きく関与しているのではなく、S-2の他の領域が関与しているかもしれない。これに関してはS-1に隣接したS-2の20アミノ残基からなるペプチドを合成し、これを抗原とした抗S-2抗体(IgG)を作製し調べ始めたところ、さらに効果が弱まった。このことについては現在要因を検討中である。
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