研究概要 |
1.本年度の研究目的は,脳血管に分布する副交感神経系の中枢(大錘体神経細胞群)の機能を支配する上位中枢領域を調べることである.そのような候補として,動脈圧受容器情報を処理する循環中枢,および侵害刺激情報を処理する中脳中心灰白質の2者を考え,まず後者について検討した. 2.中心灰白質の尾側上半部は脳血管拡張作用が最も強力で,NMDA微量注入(1mM,100nl)によって大脳皮質脳血流量は平均100%増加し,皮質酸素消費率(皮質神経活動性を表す)は52%増加した. 3.誘発される皮質血流量増加がもっぱら皮質神経活動性の亢進に基づくことがわかっている急性寒冷刺激の結果と比較したところ,中心灰白質の皮質血流量増加機能の約50%が代謝性脳血流量増加機序(皮質神経活動状態亢進に連動して作動する),残りの約50%が非代謝性機序に基づいていることがわかった. 4.副交感神経は皮質神経活動の変化なしに(非代謝性に)脳血流量を増加させることがわかっているので,中心灰白質は副交感神経中枢を支配し,非代謝性の脳血流量増加成分を誘発すると考えた. 5.ところが中心灰白質の脳血流量増加は節遮断剤に抵抗性で,中枢性ムスカリン受容体阻害剤で完全に遮断された.これは副交感神経中枢の脳血流量増加の特徴とはまさに反対であるので,副交感神経中枢は中心灰白質によっては支配されていないことがわかった.従って動脈圧受容器反射にかかわる循環中枢によって支配されている可能性が強まったので,この観点で今後の研究をすすめる.
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