中枢をかいした心臓の神経調節機構を調べる目的で、心臓交感、副交感神経活動の指標として、心筋間質ノルエピネフリン、アセチルコリン濃度の測定法を確立した。本年度は、さらにこの基礎研究を継続し、交感神経活動の鋭敏な変動を、より短いサンプリング時間で検出するため、システムの検出限界を向上させ、サンプル時間を2分まで短縮した。つぎに中枢を介した心臓の交感神経系の制御様式をあきらかにする目的で下大静脈閉塞による低血圧時の心筋間質ノルエピネフリン濃度の変化を測定した。低血圧時の中枢を介した神経調節は、心臓交感神経終末においては、ノルエピネフリンの分泌と再吸収が同時進行で起きることが明らかとなった。除神経時には、血中ノルエピネフリン濃度の上昇に伴うextractionに、よって心筋間質ノルエピネフリン濃度が上昇する事が示唆された。また心筋虚血時の神経調節は、中枢を介した反射や制御よりも、むしろ交感神経終末のノルエピネフリン動態の破綻が引き金となって心筋間質ノルエピネフリン濃度の上昇が起きることが明らかとなった。さらにこうした上昇は、ノルエピネフリン再吸収機構の逆転によって、ノルエピネフリンの分泌がおき、再潅流時には、再吸収機構の正常化が出現し、神経終末のノルエピネフリンの枯渇は認められなかった。以上のことから、心臓交感神経終末の中枢を介した調節を調べるためには、ノルエピネフリン分泌、再吸収、小胞への輸送、合成、代謝のそれぞれの関与を明らかにすることが不可欠である。そこで、心筋間質dihydroxyphenylglycol(DHPG)濃度を、神経終末内ノルエピネフリン濃度の指標として導入し、超高感度DHPG濃度測定法を、確立した。さらに心筋間質ノルエピネフリン、DHPG濃度同時測定によって神経終末、ノルエピネフリン分泌、再吸収、小胞への輸送、合成、代謝機能のそれぞれの障害を、鑑別する方法を検討し、中枢から制御機序を明らかにした。
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