研究概要 |
〔目的〕ヒトの随意的な運動時には非活動筋支配の交感神経活動が促進されるが,活動筋支配の交感神経活動が促進されるか否かについてはまだよく分かっていない.本研究は随意運動時に,活動筋、とくに抗重力筋支配の交感神経活動がどのように反応するかを明らかにすることを目的とした. 〔対象と方法〕研究の目的と内容に関する詳しい説明を受けた後,被験者となることを承諾した健康成人を対象として実験を行った.背臥位にて下腿三頭筋支配の脛骨神経から先端直径1μm,インピーダンス3〜5MΩのタングステン微小電極を用いて筋交感神経活動を記録した.同時に下腿三頭筋の筋放電を表面電極を用いて記録した。背臥位での測定の後,傾斜台を用いて受動的な head-up tilt を負荷し,立位でも同様の記録を行った.立位で筋交感神経活動記録側の下腿三頭筋に随意的な持続性収縮と,約1秒周期での律動性収縮を負荷した際の筋交感神経活動の反応をも観察した. 〔結果〕1.脛骨神経から記録した筋交感神経活動は受動的な head-up tilt 時の,下腿三頭筋に筋放電のみられない状態では,体位傾斜角度に応じて促進されたが,立位で下腿三頭筋に筋放電が僅かに出現する状態では軽度に抑制された.2.脛骨神経から記録した筋交感神経活動は立位で下腿三頭筋に持続性収縮を負荷すると促進されたが,律動性収縮を負荷すると逆に抑制された. 〔結論〕立位での抗重力筋支配の交感神経活動は抗重力筋の持続性収縮により促進されるが,律動性収縮によって抑制される.この機序には律動性収縮に伴う筋ポンプ作用が関与すると思われる.
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