本研究では、細菌性内毒素(LPS)による発熱耐性時に脳内のインターロイキン1 (IL-1)産生状況が変化している可能性について、in situ hybridization法と免疫組織化学的手法を用いて検討した。LPS (4 ug/kg)を家兎の静脈内に5日間連日投与すると、LPSによる二相性発熱の二相目が完全に抑制された(発熱耐性)。コントロール家兎の静脈内にLPSを投与すると、1時間後に終板器官(OVLT)でIL-1mRNA (in situ hybridization法)とIL-1分子(免疫組織化学的手法)の発現が起こるが、発熱耐性家兎にLPSを投与してもIL-1の産生は観察されなかった。LPS静脈内投与1時間後に起こる脾臓のIL-1の産生については、コントロール家兎と発熱耐性家兎との間に有意の差を認めることはできなかった。これらの結果より、発熱耐性は、OVLTでのIL-1産生が消失したために起こったものと考えられる。さらに、発熱耐性時には、LPS二相性発熱の二相目の抑制が起こったことから、OVLTで産生されるIL-1は二相性発熱の二相目を引き起こしている可能性が想定される。 他方、発熱と同様に体温の上昇をもたらす拘束ストレス負荷により、脳内IL-1の産生が亢進することがラットで報告されている。そこで、家兎に1時間の拘束ストレスを1回負荷して脳内でのIL-1の産生について検討したがその産生は確認できず、ラットでの報告と違う結果となった。ストレス頻回負荷の実験(耐性実験)についてはラットIL-1 cDNAを入手し、ラットのin situ hybridizationを行なうのが取るべき最良の方法と思われる。
|