運動時の適切な循環応答に対して中枢および末梢入力は運動場面毎にそれぞれ責任的な役割を果たす。本年度は運動時間の影響と随意努力の影響について検討した。 短時間では筋交感神経活動が増加しない最大酸素摂取量の40%負荷自転車運動を30分間持続させた際の筋交感神経活動、心拍、血圧、血中乳酸、鼓膜温、活動筋表面筋電図を観察した。心拍数、血圧は運動時には有意に上昇し、心拍数は運動終了までわずかに増加したが、平均血圧は運動の後半では低下した。筋交感神経活動および鼓膜温は運動開始15分以後有意に上昇した。運動時の血中乳酸濃度は変化しなかった。本結果から、運動時の循環調節に重要な働きをする筋交感神経活動は運動時間の延長にともない高まることが明らかとなり、これには、圧受容器や体温上昇などにともなう末梢からの入力が大きく関与し、中枢からの入力は小さいことが明らかとなった。 随意的な運動努力の異なる最大努力と一定張力発揮運動を行わせた際の筋交感神経活動、血圧、心拍の変化を比較検討した。いずれも2分間の運動とした。心拍数は最大努力運動では運動開始後急峻な上昇を示したが一定張力発揮では上昇は緩慢であった。しかし、筋交感神経活動、血圧は運動開始に遅れて増加し、随意的な運動努力による差は認められなかった。したがって、運動開始期の筋交感神経活動に対する中枢指令の影響は小さいことが示唆された。 運動時の循環調節には反射性入力が中枢性入力より大きな役割を果たすと考えられた。
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