研究概要 |
エストロゲン(E_2)は下垂体前葉の神経ペプチド(ソマトスタチン(SRIF),甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH))受容体結合活性を正に調節し、TRH受容体遺伝子の転写レベルに作用することを報告してきた。本研究はE_2によるこれらの受容体活性の調節機序を分子レベルで解析することを目的として行った。1)下垂体腫瘍株化細胞GH_3のSRIF受容体結合活性のE_2による正の調節はSSTR1,2のmRNAレベルの正の調節に基づく可能性を示した。これらのmRNAレベルの増加には先行して合成される蛋白を必要としなかった。SSTR1に対するE_2作用の様式はTRH受容体のそれと類似しており、E_2による受容体の正の調節機序に共通性が推測された。2)5種類のSRIF受容体サブタイプのcompetitive RT-PCR法を確率しmRNA量を測定したところ各サブタイトルの発現量比はGH_3細胞と下垂体初代培養細胞では異なっていたが、E_2はSSTR1、2、3mRNA量を増加した。GH_3細胞では主にSSTR1、2を初代培養細胞では主にSSTR3、2mRNA量を増加していた。3)転写レベルに対するE_2作用を明らかにするため、TRH受容体遺伝子5'上流域(約1.1Kb)の構造を調べたところ、TATA boxを持たず、GCF、AP1、AP2、half GRE、half TREっなどの結合モチーフが認められた。E_2受容体の応答配列EREは認められなかったが、E_2受容体がEREに非依存的に、AP1サイトを認識するJunやFosと結合して転写活性を高める例もあり、その可能性も考えられた。おそらくE_2はE_2受容体を介してプロモーター領域に作用する他の転写因子と協調しながら、ペプチド受容体遺伝子の発現を調節し下垂体受容体結合活性を正に調節しているのではないかと推測された。
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