ウサギの心臓からクローニングしたKチャンネル(RBHIK1)はマウスマクロファージのIRK1と塩基レベルで87%の相同性を有しているが、そのmRNAは心房筋には殆ど発現していないのに対し心室筋には非常に大量の発現しており、RBKIK1は心室において重要な役割をしていると考えられる。また、その発現パターンは電気生理学的研究によって調べられている心筋のネイティブな内向き整流Kチャンネル(I_<K1>)の発現パターンと一致している。そのRBHIK1をアフリカツメガエル卵母細胞に発現させ、パッチクランプ法により単一チャンネル電流を記録し、ネイティブのI_<K1>との比較を行った。RBHIK1チャンネルはI_<K1>と同様に強い内向き整流特性を示し、室温での単一チャンネルコンダクタンスはRBHIK1が約18pSであるのに対し、ネイティブのI_<K1>が約23pSであり、比較的近い値であった。また、RBHIK1、I_<K1>ともにサブレベルコンダクタンスの電流が観察されたが、その出現頻度はRBHIK1の方がより高く、RBHIK1の場合2/3のコンダクタンスレベルの電流が良く観察された。最近、IRK1がShakerタイプの電位依存性Kチャンネルの場合と同様に4量体を形成することが確かめられたが、単一のRBHIK1クローンを発現させた際にサブレベル電流が観察されることより、RBHIK1チャンネルは3つの4量体から構成されるという可能性が考えられる。また、RBHIK1チャンネルの開閉はネイティブのI_<K1>より遅く、心筋にはRBHIK1の機能を修飾する別の調節分子のようなものが存在しているのかも知れない。1994年6回膜貫通型の電位依存性Kチャンネルで報告されたβサブユニットのような蛋白分子が2回膜貫通型の内向き整流性Kチャンネルにおいても存在する可能性が充分に考えられ、それを明らかにすることは今後の課題である。
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