1.相同性の情報をもとにしてウサギの心筋から内向き整流特性を持つKチャンネル(RBHIK1)をクローニングしその一次構造を決定したところ、RBHIK1チャンネルは427個のアミノ酸からなり、2つの膜貫通領域を有することが明らかとなった。そして、RBHIK1チャンネルはマウスマクロファージのIRK1とアミノ酸配列上97%の相同性を示したが、両者の間にはチャンネル孔の少し外側と考えられる領域に興味をひかれるアミノ酸配列の違いが認められた。また、RNAブロット解析によって組織分布を検討したところ、RBHIK1mRNAは心室筋に非常に大量に存在していたが、心房筋での存在は検出できなかった。このことは電気生理学的研究によって報告されている心筋の内向き整流Kチャンネルの存在様式と一致するものである。 2.卵母組織の発現系を用いて電気生理学的性質を検討したが、RBHIK1電流は強い内向き整流特性を示し、心筋固有の内向き整流性Kチャンネル(I_<K1>)と同様に細胞外液K^+によって影響を受けた。すなわち、細胞外液K^+濃度が高いほどその電流は大きくなり、また活性化の閾値電位もよりポジティブな値となった。さらに、細胞外のBa^<2+>やCs^+によって電位依存性、時間依存性に抑制された。しかし、心筋固有のものがK^+の平衡電位よりもポジティブな電位である程度の外向き電流も流すのに対し、RBHIK1電流は外向き電流を流さなかった。また、単一チャンネルコンダクタンスは外液K^+145mMにおいてRBHIK1電流の場合約18pSであり、これは心筋固有のI_<K1>電流の約23pSと近い値であった。さらに、RBHIK1電流においてしばしば3分の2レベルのサブコンダクタンス電流が観察されたが、このことはRBHIK1チャンネルが3つの4量体で出来ていることを示唆しているのかも知れない。
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