研究概要 |
従来より我々はヒト大動脈内皮細胞を用い,蛍光色素Fura-2により細胞内Ca^<2+>濃度の変化を顕微蛍光測光装置(CAM-230)を用いて測定し,Ca^<2+>流入がK^+流出ではなく,細胞外からのクロライド流入に依存していることを始めて明らかにした.本研究では,選択的に小胞体Ca^<2+>-ATPaseを抑制するThapsigarginやCyclopiazonic acidによって貯蔵部位を枯渇しても,Cl^-依存性のCa^<2+>流入が引き起こされるか否かを確認し,Ca^<2+>流入が貯蔵部の枯渇とどのように連関しているかを解析した. 外液Ca^<2+>(1nM)存在下で,培養内皮細胞にTG(100mM)やCPA(10μM)を作用させると,一過性の[Ca^<2+>]_iの増加相に続き,緩やかに下降する持続相がみられた.外液Ca^<2+>除去下でTGやCPAを作用させると,一過性の増加相のみとなった.また,持続相は外液Ca^<2+>の除去,外液Cl^-濃度の低下(40mM),Cl^- channel blockerであるN-phenylanthranilic acid(1mM)の処置により抑制された.さらにTGあるいはCPA存在下でhistamineを処置するとhistamineによる[Ca^<2+>]_iの増加反応はTGあるいはCPAの前処置時間が長くなるにつれ,より抑制された.以上の結果から,細胞内ストアからのCa^<2+>遊離による[Ca^<2+>]_iの増加あるいは細胞ストアの枯渇がCl^-依存性にCa^<2+>流入を引き起こすことが強く示唆された.受容体刺激によるCa^<2+>流入においても,細胞内ストアからのCa^<2+>遊離あるいは細胞内ストアの枯渇が必須と考えられた.
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