研究概要 |
本年度の当該研究の目的はET受容体拮抗薬が虚血再灌流不整脈および心機能の回復を改善するか否かという事を明らかにする事であった。しかしながら、最近、ET受容体拮抗薬が虚血性不整脈軽減作用を持つという報告もなされた。また、in vivoの実験に十分な量のET_A受容体拮抗薬が入手不可能であったためその結論は得られなかった。そこで当初の研究計画に替えてET受容体刺激と同様にイノシトールリン脂質代謝回転系と共役するα_1受容体刺激のATP感受性K^+チャネルに対する影響を検討した。これにより、最近preconditioning効果で注目されているα_1受容体刺激の虚血心筋細胞への直接作用について評価しようとした。 摘出モルモット乳頭筋においてα_1受容体刺激薬のmethoxamine(100μM)はそれ自身では活動電位幅(APD)には影響を与えなかった。しかしながらET‐1と同様に、nicorandil(1 mM)、cromakalim(30μM)でAPDを短縮させた後ではmethoxamineは有意にAPDを延長させ、発生張力を増加させた。この作用はα_<1B>受容体遮断薬のchloroethylclonidine(10μM)では拮抗されず、α_<1A>受容体遮断薬のWB4101(100nM)で拮抗された。モルモット乳頭筋標本を低酸素、無グルコース状態にするとAPDが徐々に短縮したがmethoxamine(100μM)あるいはglibenclamide(10μM)存在下においてAPD短縮は有意に抑制された。 単一モルモット心室筋細胞においてK^+チャネル開口薬のnicorandil(1mM)およびcromakalim(30μM)はATP感受性K^+電流(I_<K・ATP>)を活性化させ、このI_<KATP>に対してmethoxamineは抑制作用を示した。細胞接着型記録により単一チャネル電流を記録しながら、代謝抑制薬の2,4‐dinitrophenolを与えるとATP感受性K^+チャネルの単一チャネル電流が記録されたが、細胞外からmethoxamineを投与するとその開口が抑制された。この様にα_<1A>受容体刺激もET_A受容体刺激と同様にI_<K・ATP>を部分的に抑制した。このI_<K・ATP>抑制作用は虚血心筋細胞にとっては障害的でありK^+チャネル開口薬の心筋保護作用を部分的に拮抗する可能性もあると思われる。
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