骨格筋の興奮収縮連関に関与する可能性のある分子量約55kDのカルモデュリン結合蛋白質(以下55K蛋白質)の解析を行い、以下のような結果を得た。1)55K蛋白質は、筋小胞体分画および部分精製リアノジン受容体分画に存在する。2)55K蛋白質のN末端から15個のアミノ酸配列はデアフォラーゼの1つであるリポアミドデヒドロゲナーゼ(分子量約55kD、ブタおよびヒト)と高い(90%)相同性がある。3)55K蛋白質は、リポアミドデヒドロゲナーゼと分子量が一致し、また共通の抗原性をもつ。しかし、リポアミドデヒドロゲナーゼは55K蛋白質のようなカルモデュリン結合能はない。4)55K蛋白質は、等電点が異なる複数の蛋白質からなり、いずれも抗リポアミドデヒドロゲナーゼ抗体と交叉反応し、カルモデュリン結合性を示した。5)55K蛋白質は、平滑筋、心筋、大脳小脳、肝臓などには存在せず、骨格筋に特異的に存在する。6)55K蛋白質は、A-I境界部位付近に存在する。7)免疫沈降法で55K蛋白質はリアノジン受容体と共沈する。 以上のように、骨格筋筋小胞体分画に存在する55K蛋白質は、リポアミドデヒドロゲナーゼと相同な部分をもつが同一蛋白質ではなく、また骨格筋特異的に発現し、triad付近に存在することが明らかになった。さらに、リアノジン受容体と直接または間接的に相互作用する可能性が強く示唆された。カルモデュリン結合能、リアノジン受容体との相互作用、骨格筋特異的な発現、および、triad付近の局在などは、55K蛋白質が骨格筋の興奮収縮連関においてDHP受容体からリアノジン受容体への情報伝達に関与する可能性を強く示唆する。55K蛋白質の機能をこの蛋白質の機能部位に対する抗体を用いて生理学的に解析する予定であり、このため、55K蛋白質の予想される機能部位を明らかにする必要があり、55K蛋白質の遺伝子解析を開始した。
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