ラット脳海馬切片を用いて、オピオイドがGTP結合型のGsをGDP結合型に変換すると同時にGTPの結合を抑えること、これがアデニル酸シクラーゼの抑制に結びつき、Caの流入を抑制することを示し、モルヒネの鎮痛作用機構の説明としてきた。今回はオピオイドによるGDP-GTP交換反応の抑制機構をさらに詳しく調べた。材料は従来のラット脳海馬切片に加えて耳下腺腺房細胞を用いた。 ラット脳海馬切片より記録されるフイールド電位がAlCl_3/NaF、およびジブチリ-ルc-AMPにより抑えられるが、前者の作用のみがモルヒネにより拮抗されることから、オピオイドの作用がGsにあることを示した。 ラット耳下腺腺房細胞からのアミラーゼの分泌はAlCl_3/NaF、および細胞透過性のジブチリルc-AMPにより促進された。細胞のα毒素処置により低分子化合物を透過性にすると、c-AMP、GTP、あるいはGTP-γ-Sによってもアミラーゼの分泌が促進された。GTPによるアミラーゼの分泌促進はモルヒネにより抑えられるのに対して、GTP-γ-Sのそれは抑えられないことよりモルヒネの作用はGTPの加水分解にあることが示唆された。また、^<32>P 4-Azidoanilido GTPによりGTP結合蛋白のPhotoaffinityラベルを行うと分泌に関与するのは43KDaのGsであることが解った。このGsへの^<32>P 4-Azidoanilido GTPの結合はモルヒネにより抑えられた。
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