交感神経、副腎髄質系の終末臓器レベルでの伝達物質の分泌調節機構についてはかなり詳細なことが明かにされている。しかし、これらの系の中枢調節機構については、重要であるにも拘らず未知の点が多い。そこで、本研究では、交感神経-副腎髄質系機能の中枢調節機構を、特に交感神経と副腎髄質とを分別して賦活する脳内機構に焦点を絞って検討した。 本年度に得られた成績を纏めると、1)ウレタン麻酔ラットの側脳室内にボンベシンを投与すると、その用量(0.1-3.0nmol)に応じて大内蔵神経の副腎枝のみならず腹腔神経節に至る交感神経枝の電気活動をも中枢性に賦活した。2)血液カテコールアミン値との関連ではプロスタグランジン(PG)E_2がEP_3受容体の賦活を介して選択的にノルアドレナリン(NA)値を著増した。この成績は先に報告したカルチトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の成績と定性的に一致する。即ち、アドレナリン(Ad)値の増加は僅かであり、この点においてAdが著増する前述のボンベシンと対照的であった。しかし、PGF_2α、PGI_2ならびにPGD_2など他のPG類にはPGE_2のような作用は殆ど認められなかった。3)交感神経-副腎髄質系の中枢統御を神経-内分泌-免疫軸の観点からも検討した。インターロイキン-1β(IL-1β)の脳室内投与は血液Ad値には無影響にNA値のみを選択的に増加した。このIL-1βの作用はシクロオキシゲナーゼ阻害薬、indomethacinの前処置で消失したことから、PGの生成を介していると考えられる。 これらの成績から、交感神経-副腎髄質系の中枢調節機構は脳内伝達物質によって分別することが可能であろう。従って、その機序をさらに詳細に検討する予定である。
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