研究概要 |
密栓したプラスチックフラスコに圧力計及びヘリウムガスボンベを並列に接続し、壁張力、ずり圧力を加える事なく、培養平滑筋細胞に圧力のみを負荷した。細胞はラット大動脈より調製しクローン化した平滑筋細胞を用いた。細胞増殖作用は細胞数及び抗ブロモデオキシウリジン抗体を使用したキットにより測定したDNA合成を指標とした。イノシトール三リン酸(IP_3)はbinding法によるRIAキットにより測定した。細胞内カルシウムは細胞をスライドフラスコに培養し、30分間Fura-2/AMを負荷後、顕微鏡システムにより、単一細胞内のカルシウムを測定した。 24時間の加圧により、細胞数、DNA合成は圧力依存性に増加した。圧力刺激はIP3産生を増加させた。この増加はホスホリパーゼCの阻害剤であるNCDCにより有意に抑制されたが、百日咳毒素によって部分的にしか抑制されず、カルシウムチャンネル拮抗薬のニフェジピンでは抑制されなかった。圧力による平滑筋細胞DNA合成の増加はチロシンキナーゼの阻害薬により有意に抑制された。細胞内カルシウムは80,160mnHgの圧力負荷により速やかに上昇し、加圧中ピーク値を保ち、減圧により速やかに加圧前値に復した。ピーク値は加えた圧力と正の相関を示し、このカルシウムの上昇はNCDCにより完全に解除された。以上の結果は、圧力刺激がPLCを活性化し、細胞内カルシウムを上昇させ、血管平滑筋の増殖をきたすものと考えられた。
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