研究概要 |
平成6年度に、虚血心筋の収縮能には、細胞質内Ca^<2+>よりも、ミトコンドリアのエネルギー通貨ATP,CP,Pi,ADP産生による自由エネルギー変化(ΔG)が大きく影響することを明らかにした(H.6.10,イタリー)。その後、更に、エネルギー転送機構のクレアチン燐酸CPシャトルとイオン動態と収縮能との密接な関係を示した(H.7.3,名古屋,第68回日本薬理学会年会) 平成7年度に至って、エネルギー産生/利用とH^+,電解質動態との連関が重要であるとの認識を得るに至り、この見地から、電解質のうち、ミトコンドリアのATP産生の元となるプロトントと他の電解質Na^+,K^+,Ca^<2+>との交換系に注目して研究を行った。これら電解質とH^+との交換系は心筋細胞膜とミトコンドリア内膜にあるので、この部位を区別するべく、単離ミトコンドリアをポリリジンに付着固定させてその表面を灌流し、顕微鏡下に主要イオンを蛍光測定し、イオン輸送の交換阻害があると思われる物質(EIPA,omeprasol)や条件について検討した。この結果、ミトコンドリア内膜には、H^+-Na^+,H^+-K^+交換系が存在し、ミトコンドリア内pHは、Na^+,K^+,Ca^<2+>との関係に於いて変化した。また、ミトコンドリアは高濃度処理後の生理濃度Ca^<2+>やpHの酸性化で、急上昇し再灌流障害をミトコンドリアレベルで説明する知見を得た。また、心筋の前負荷変化にミトコンドリアのエネルギー産生と電解質輸送が大きく変化するとの結論に達した。(H.8.3,長崎,第69回日本薬理学会年会)。
|