シグナルシークエンストラップ法をもちいて我々がクローニングしたintercrine α subfamilyの新しいメンバー、マウスSDF-1の機能の一つはpre B細胞の増殖因子であることが大阪大学の岸本らにより明らかにされた。そのため、申請時に予定していたSDF-1の機能解析についての研究は行なわなかった。マウスSDF-1をプローブにヒト相同遺伝子のクローニングを行ない、その塩基配列の決定を行なった。マウスSDF-1とヒトSDF-1はアミノ酸レベルで95%以上の相同性が認められた。また、その遺伝子構造を調べたところ、SDF-1の二つの分子種SDF-1αとSDF-1βはalternative splicingにより生ずるものであることがわかった。Northern blot解析では、調べた組織すべてで発現が認められた。また、プロモーター領域はGCrichであり、SDF-1のubiquitousな発現パターンを裏付けることができた。現在までに報告されているintercrine α subfamilyの遺伝子がすべて第4染色体長腕上にあるのとは異なり、SDF-1遺伝子は第10染色体長腕上に位置することがわかった。これらのことから、SDF-1は、サイトカインにしては例外的に種間の保存が強いこと、また、ほかのintercrine a subfamilyのメンバーと染色体位置が違うことから、生物学的に重要で、かつuniqueなintercrine a subfamilyの一員であることが明らかとなった。
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