研究概要 |
これまでに、摂南大学・高野らとの共同研究によりヒトNADH-シトクロムb_5還元酵素の3次構造を明らかにした。この結果から、本酵素の94番目のThrが補酵素FADのイソアロキサジン環のN5原子から約3A^^○の距離にあることが示された。そこで本研究では、既に確立していた本酵素の大腸菌における大量発現系をもとに、部位特異的変異法によりThr-94を種々のアミノ酸残基に置き換えた変異酵素を作製し、その酵素学的パラメータを測定することにより、本残基の反応における役割を明らかにすることによって反応機構の本質を理解することを目的としている。 これまでにThe-94をSer,Ala,Cys,Asnに置換した発現プラスミドを作製したが、Thr-94→Alaの変異では活性をほとんど検出できず、本残基は酵素活性に必須であると考えられた。Thr-94→Serの活性は野生型とほぼ同程度で、94番目にOH基があることが重要であると考えられた。Thr-94→Asnの変異では、活性が約0.2%に低下していたが、stopped flow法で測定した還元半反応は、野生型と同程度の速度を保っており酸化半反応速度が特異的に遅くなっていると考えられた。これらの結果からThr-94は反応に極めて重要であると結論した。現在これらの変異酵素の3次構造を解析すべく、大量精製、結晶化を行なっている。
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