ラット肝に発現する脂肪酸不飽和化酵素遺伝子の同定とクローニング 哺乳類における細胞内の巨大ミトコンドリアの出現と脂肪不飽和化酵素遺伝子の転写制御との関係を明らかにする目的で、脂肪酸不飽和酵素遺伝子の同定とクローニングを試みた。まず、ラット肝臓および培養肝細胞からmRNAを抽出してcDNAライブラリーを作成した。次に、緑藻のdesAおよび酵母OLE1のcDNA配列から相同配列をいくつか選別し、プローブとなるオリゴヌクレオチドを合成した後、テイリング法によってdigoxygenin-UTPを反応させ、DIGプローブを作製した。このDIGプローブを使って、プラークハイブリダイゼイションを行ったところ、いくつかの陽性プラークが得られた。しかし、それらのクローンのDNAシークエンスを行ったところ、すべて脂肪酸不飽和化酵素遺伝子とのホモロジーがなかった。 今後の研究計画 直接ミトコンドリア膜の脂肪酸を不飽和化する酵素の遺伝子を同定することは困難であると思われるので、ラットの初代培養肝細胞を用いた細胞レベルでのミトコンドリア巨大化の実験系を確立し、ディファレンシャルディスプレイ法によって巨大ミトコンドリアを持つ肝細胞と持たない肝細胞との間で、発現の異なる遺伝子群を同定することを試みる。そのために、まず初代培養の培養液中への薬物投入によってミトコンドリアの巨大化とその阻止を人工的に引き起こす実験系を確立する。次に、変異した肝細胞と正常肝細胞との間で発現量の異なる遺伝子群を同定する。
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