研究課題/領域番号 |
06670166
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
堀池 喜八郎 滋賀医科大学, 医学部, 助教授 (80089870)
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研究分担者 |
石田 哲夫 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (10176191)
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キーワード | D-アミノ酸 / D-セリン / D-アミノ酸酸化酵素 / 中枢神経系 / グリア細胞 / 星状グリア細胞 / NMDA受容体 |
研究概要 |
最近精密なD-アミノ酸の分析方法が開発され、哺乳類の脳・腎・血中に遊離D-アミノ酸が見い出されている。我々はこのうち神経興奮性アミノ酸受容体の1つであるN-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体の活性化剤であるD-セリンに着目し、脊椎動物(魚類・両生類・鳥類・哺乳類)の脳内における遊離D-セリンの分布を調べた。脳内D-セリン含有量は鳥類以下の下等脊椎動物では低かったが、ヒトを含む哺乳類ではNMDA受容体が多く分布する前脳に〜400nmol/g wet weight(D/L比=0.4)も存在した。しかし後脳での含有量は低かった。D-セリンは無菌マウスでも同程度検出され、D-セリンは腸内細菌には由来しないことが判明した。 ニッケルイオンを用いる高感度共役過酸化法によって、D-セリンの分解酵素であるD-アミノ酸オキシダーゼの中枢神経系での分布をラット全脳の連続固定切片を用いて調べた。本酵素は前脳にはなく、脳幹(中脳・橋・延髄)・脊髄・小脳に限局して分布していた。組織化学的方法による分布は、酸素電極を用いて測定した酵素活性の分布と一致した。上記のすべての部位で本酵素の含有細胞は小脳でのBergmannグリア細胞を含め星状グリア細胞のみであり、他のタイプのグリア細胞・ニューロン・内皮細胞・上衣細胞には本酵素は全く存在しない。 これらの結果から、哺乳動物の中枢神経系では前脳に高濃度のD-セリンが存在することが判明し、その脳内分布は分解酵素であるD-アミノ酸オキシダーゼの分布と逆相関することが明らかになった。さらに本酵素の含有細胞は星状グリア細胞のみであることを確立した。この結果から中脳・菱脳・脊髄の星状グリア細胞はオキシダーゼを発現しているが、前脳(終脳・間脳)に存在する星状グリア細胞はオキシダーゼを発現していないということ、すなわち星状グリア細胞のall-or-none型の部位的分化を世界で初めて明らかにした。
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