本年度はセンダイウイルスを用いた遺伝子治療用ベクターの改良に取り組み、以下のような成果を上げた。 1.遺伝子導入の効率を上げる研究 ヒト細胞で安定に複製できるEBウイルスの複製系と組み合わせることによって、膜融合リポソームを使った遺伝子導入法の効率を定量的に解析することに成功し、非ウイルスベクターとしてもっともよく用いられている陽荷電リポソーム法に比較して、DNA量あたりの遺伝子導入活性が30倍高いことを見いだした。また種特異性に関しても検討し、ヒト・サル・ウシ・イヌ・ウサギ・マウス・ハムスター・ラットの細胞に対してほぼ同等の活性を持っていることを確認した。現在さらにラムダファージの頭部をサイトメガロウイルスのテグメント・タンパク質pp65の核移行シグナルで修飾した系を用いて導入効率が上昇するかどうかを検討している。 2.宿主ゲノムと独立に安定に存在できる遺伝子発現系の開発 センダイウイルスから遺伝子発現活性をもったヌクレオキャップシドを精製することに成功し、さらにそこからRNAを除いたタンパク質画分を得て、人口合成したRNAとの複合体を作ることに成功した。
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