研究概要 |
チミジンホスホリラーゼ(dThdPase)はチミジンの代謝に関係している。我々はdThdPase活性が正常組織より癌組織で上昇していること、またdThdPaseが血小板由来皮細胞増殖因子(PD-ECGF)とほぼ同一の物質であることを既に報告している。血管新生は腫瘍の増殖には必須の条件と考えられているが、PD-ECGFは in vivo で血管新生活性をもつことが鶏卵漿尿膜法(CAM法)により確認されている。 今年度は、我々は1)dThdPaseが血管新生活性をもつか否かを検討し報告した。精製したdThdPaseは、ウシ大動脈血管内皮(BAE)細胞に対して塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)と同程度の遊走刺激活性をもっていた。次にCAM法、ゼラチンスポンジマウス皮下移植法によってin vivoにおける血管新生活性が確認された(Nature 368,198,1994).さらにdThdPaseの血管新生活性にはdThdPase活性が必須であるとをdThdPase活性を欠失した変異蛋白質によって確認した。この結果よりdThdPaseによるチミジン代謝産物が血管新生に関わっている可能性が考えられたので検討した。2-デオキシリボースはCAM法において高い血管新生活性が認められたが、ゼラチンスポンジマウス皮下移植法において血管新生活性は認められずマクローファージに対しても血管新生誘導物質を放出させるなどの活性化作用はなかった。2)dThdPaseはある種の抗癌剤の活性化に関与すると報告されている。我々はPD-ECGFのcDNAをKB細胞に過剰発現させKPE-3細胞を得たがこの細胞は親株KB細胞に比べ5'-デオキシ-5-フルオロウリジンに対し約19倍感受性が高かった(Cancer Res.53,5680-5682,1993)。
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