我々は、インターロイキン-3(IL-3)遺伝子を導入することによって自律性増殖能を獲得したマウス骨髄性白血病細胞株NFS60の解析から、ガングリオシドGD1aがIL-3による情報伝達を促進的に調節していることを見いだした。これは、がん関連糖脂質が単にがん細胞表面のフェノルタイプを定めているのではなく、細胞増殖機構およびがん細胞の自律性増殖に積極的に関与していることを示している。これに基づき、本研究ではCD1aの発現調節機構の解析を行った。 まず、メタロチオネインプロモーターやサイトメガロウイスルプロモーターでIL-3遺伝子をドライブし、遺伝子導入後にネオマイシン耐性形質でセレクションできるようにプラスミドを組み換えて調製した。遺伝子をNFS60細胞に導入後、導入株をG418で選択した。その導入株におけるガングリオシドGD1aの発現、並びにIL-3依存性株における外来性IL-3のGD1a発現に対する効果を解析した。その結果、ガングリオシドGD1aは細胞がIL-3非依存性を獲得するか否か、また外来性IL-3が細胞増殖をサポートするか否かという点で、全か無かの割合で発現することが判明した。NFS60細胞のIL3自己分泌という観点からすると、内在性に遺伝子強発現させることにより生成したIL-3蛋白は正常なレセプターを介さない経路で、細胞内で細胞増殖に作用していることがわかっている。外来性にIL-3を作用させてもガングリオシドGD1aが発現するのは正常なIL-3レセプターを介するものであるのに対し、内在性にIL-3遺伝子を強発現させて見いだされるガングリオシドGD1aは正常なレセプターを介さないIL-3の作用によるものであることが示唆された。
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