動脈硬化性IV型高脂血症の病因解析とその遺伝子診断法の開発

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06670179
• 研究機関: 国立循環器病センター
• 研究代表者: 高木 敦子 国立循環器病センター研究所, 病因部, 室員 (90179416)
• 研究分担者: 山本 章 国立循環器病センター研究所, 副所長 (00028408) ; 池田 康行 国立循環器病センター研究所, 病因部, 室長 (90176107)
• キーワード: リポ蛋白リパーゼ / IV型高脂血症 / 高トリグリセリド血症 / 高脂血症 / ヘテロ接合体 / 直接塩基配列決定法

研究概要

【目的】動脈硬化性高トリグリセリド血症である原発性IV型高脂血症(IV型)の病因は、リポ蛋白リパーゼ(LPL)欠損ヘテロに血清TG合成を高める負荷因子の合併によることを提唱してきた。それはIV型患者を対象に、我々の開発したサンドイッチ-EIA法によるLPL蛋白測定系を用いて、LPL蛋白低値者を選択し、そこからLPL変異遺伝子を同定する方法で行われた。32名の対象者中24名が正常の半分以下のLPL蛋白低値であった。このうちDNAの人手できた18名中8名が遺伝子レベルでLPL欠損症ヘテロ接合体であった。本研究では、ヘテロ接合体の状態でも効率良く遺伝子変異を決定できるシステムを作り、まだ遺伝子解析されていない者がLPL欠損ヘテロ接合体であるかを調べ、上述の結論をより確固としたものにすることを目的とする。【実績1】効率よく遺伝子変異を決定するためのシステムを構築した。特に本研究においては、ヘテロ接合体から変異部位を決定することが必須である。この場合、直接塩基配列決定を行うと、正常遺伝子由来の塩基によるバンドと異常遺伝子由来のそれの2本のバンドが同じ易動度で、A/T/G/Cの異なったレーン上に現れる。このためバックグラウンドの低い明瞭な直接塩基配列決定の電気泳動結果を得ることが重要なのでこの方法を改良した。遺伝子増幅用プライマーの5′側に余分の9塩基をつけ、この部分でA/T/G/Cの含量を制御することで改良に成功した(論文投稿中)。【実績2】“実績1"の系を用いて、LPL蛋白低値群中に新たに3名のLPL欠損ヘテロ接合体を同定した。【実績3】平成7年度の研究計画の1つである、LPL蛋白量とLPL遺伝子ポリモルフィズムの関係の研究に有用なLPL遺伝子ポリモルフィズムを新たに見い出したので、解析をより詳細にすることが可能となった(論文投稿中)。

研究成果

• [文献書誌] 高木敦子: "原発性高トリグリセライド血症(IV・V)の病因解析(第3報)" 脂質生化学研究. 36. 378-380 (1994)
• [文献書誌] 高木敦子: "リポ蛋白リパーゼ(LPL)" 日本臨床. 53. 639-643 (1995)
• [文献書誌] 堤 善多: "低リポ蛋白リパーゼ群でのアルコールによる内因性高トリグリセライド血症の発症" 日本消化器病学会誌. 92(印刷中). (1995)
• [文献書誌] 池田康行: "血漿リポ蛋白異常症:リポ蛋白リパーゼ(LPL)" 日本臨床. 52. 3146-3152 (1994)
• [文献書誌] 池田康行: "高トリグリセライド血症" Molecular Medicine. 31. 518-526 (1994)
• [文献書誌] 池田康行: "動脈硬化性高トリグリセライド血症の成因の解明と診断法の確立" Therapeutic Research. 15. 884-890 (1994)
• [文献書誌] 山本 章: "リポタンパク質異常症" 現代化学. 23. 89-94 (1994)
• [文献書誌] A.Tkagi: "A newly identified heterozygous lipoprotein lipase gene mutation (Cys^<239>→Stop/TGC^<972>→TGA;LPL_<obama>)in a patient with primary type IV hyperlipoproteinemia." Journal of Lipid Research. 35. 2008-2018 (1994)
• [文献書誌] Y.Ikeda: "Current Advances in Triglycerides and Atherosclerosis" Churchill Livingstone,Japan, 241 (1994)
• [文献書誌] Y.Ikeda: "Multiple Risk Factors in Cardiovascular Disease" Churchill Livingstone,Japan, 277 (1994)
• [文献書誌] A.Yamamoto: "Multiple Risk Factors in Cardiovascular Disease" Churchill Livingstone,Japan, 277 (1994)