研究概要 |
【目的】高頻度に出現する高トリグリセリド(TG)血症(TGが150mg/dl以上の病態:WHO分類でのIV型が高頻度)は動脈硬化症への危険因子として認識されている。本研究では、我々の開発したサンドイッチ-EIA法によるリポ蛋白リパーゼ(LPL)蛋白測定系とLPL遺伝子解析によって、原発性IV型高脂血症の病因を解明することを目的とした。【実績1】原発性IV型を示す外来患者の中に高頻度(32名中24目:75%)正常の2分の1以下の低LPL蛋白値を示す者が存在した。この低LPL蛋白値をもたらす遺伝的背景をSSCP法と平成6年度の研究の過程で改良した直接塩基配列決定法を用いて調べた。その結果、24名中DNA入手可能であった18名のうち14名が遺伝子レベルでLPL遺伝子異常ヘテロ接合体であった。よって、原発性IV型の遺伝背景には、LPL遺伝子異常ヘテロ接合体が存在することがわかった。【実績2】LPL遺伝子の5種類(HindIII, Hinfl, MaeII, PvuII, terta-repeat)のコモンポリモルフィズム部位でのアレルのちがいや、これらから構成されるハプロタイプのちがいはLPL蛋白量に影響しなかった。正常の2分の1かそれ以下といったLPL蛋白値の低下を引き起こす原因は、やはりLPL遺伝子異常ヘテロ接合体によることがより明確になった。【実績3】この遺伝背景に負荷する因子として、アルコール多飲(33g/日)が有力な負荷因子であった。なお、正常LPL蛋白値を示すケースでは、同程度のアルコール摂取量ではIV型高脂血症を引き起こさない。 以上より、原発性IV型高脂血症の病因遺伝子はLPL遺伝子異常ヘテロ接合体であり、ここにアルコール多飲等のTG合成負荷因子が加わって本症が発症することが明らかとなった。
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