研究概要 |
内視鏡技術が進歩すると共に早期食道癌がしばしば見つかるようになった。その中に上皮内を中心に進展するタイプがかなり含まれている。この型は細胞異型性が少なく再生性異型と癌の中間的組織像を示し通常異形成と呼ばれる。同様の変化はクレータを形成する結節状食道癌の周囲の粘膜においてもしばしば観察されていた。そこで異形成を伴う結節状食道癌と伴わない結節状食道p53遺伝子産物の免疫染色を試みた。その結果,大部分の症例において結節状腫瘍部分は勿論のこと、異形成部分においても免疫染色陽性の結果を得た。次にこれらの症例についてp53遺伝子の塩基配列を調べたところトランジション型の変異が認められた。しかし,トランスバ-ジョン型の変異は確認されなかった。これまで我々は腫瘍組織のパラフィン切片からPCR法によりp53遺伝子を増幅し,すべてのサンプルをABI373Aシステムによりダイレクトシーケンスを行なっていた。これまで正常の細胞をできるだけ避けるために顕微鏡下で上皮内の異常細胞部分を採取してきた積もりであったがかなりの正常細胞が混在しシーケンス結果の判定が困難であった。そこでPCR産物をサブクローニング法で分離し非常に多数のサンプルについてシーケンスを行なってきた。しかし,非常に能率が悪く煩雑なため多数の症例を処理できなかった。そこでPCR産物をSSCP法により異常バンドを確認し同部を切り出しシーケンスを試みている。検体の処理過程やその後のシーケンスが我々の研究室の中でもできるようにと非放射性SSCP法の開発に取り組んできた。最近ようやく同方法が完成しかなり容易に実施することができるようになり今後は多数の異常病巣についての検索が可能となるものと期待される。
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