研究概要 |
1,異種免疫複合体(peroxidase-antiperoxidase complex:PAP)を未固定凍結切片上で反応させることによって、ヒト濾胞樹状細胞(follicular dendritic cells;FDC)の免疫複合体捕捉能をin vitroで検討するアッセイ法を確立した。本法を用いた検討では、ヒトFDCの免疫複合体捕捉能は補体依存性であり、2種類の補体リセプターCR1(CD35)、CR2(CD21)の双方が関与していることが確認された。但し、CR3(CD11b)や既知のFcリセプターの関与は確認できなかった。さらに、本法を応用し、濾胞性リンパ腫の腫瘍性濾胞に局在するFDCや瀰漫性リンパ腫組織内に散在するFDCも免疫複合体捕捉能を有することを確認した。 2,これまで報告されてきた各種のFDCのマーカーが通常ホルマリン固定・パラフィン包埋切片においても応用可能かどうかについて検討した。その結果、CD21やCD23に対する抗体の一部あるいはS100蛋白a鎖に対する抗体では十分な酵素前処理を行なうことによって、パラフィン切片でもかなり特異的にFDCを染め出すことが観察された。この観察結果を応用し、蓄積されてきた悪性リンパ腫の各症例についてのFDCの分布や局在について現在検討中である。 3,従来よりその存在が知られてきた濾胞性リンパ腫のFDCについて、各種リセプターや表面抗原の分布を詳細に比較検討した。その結果、DAF(decay accerelating factor),CD23(FceRII)、NGFR(neuron growth factor receptor),DF-DRC1分子などの発現には症例によってかなり差異があることが観察され、その多様性が示された。現在さらに瀰漫性リンパ腫やT-細胞性リンパ腫に分布するFDCにおけるこれら分子の発現についても検討中である。 4,悪性リンパ腫のうちで、腫瘍細胞にIL-4やIL-5等のサイトカインの産生がみられるものとFDCの表面に発現する分子、とくにCD23の発現量について検討した。その結果、いわゆるAILD型のT-cellリンパ腫の一部では腫瘍細胞にIL-4の発現が見られ、それと共にFDCの表面に豊富なCD23分子の発現が確認され、これらのサイトカインによるFDCの表面分子発現の制御が示唆された。
|