研究概要 |
アミロイド・アンギオパチー(CAA)における脳血管の破綻機序を明らかにする目的で,脳皮質下出血症例の脳血管に沈着したアミロイドについて組織学的,免疫組織学的,電顕的および免疫電顕的に検索した.免疫組織学的には脳皮質下出血の手術例31例中22例,5例の高齢者のCAAと2例のアルツハイマー病の脳血管について抗β蛋白,シスタチンC(cysC)およびアポリプロテインE(ApoE)抗体を用いて検索した.免疫電顕的には5例のCAA手術例と高齢犬の脳血管について抗β蛋白およびcysC抗体を用いて検索した.CAA手術例22例全例にアミロイド沈着がみられ,そのアミロイドは抗β蛋白およびApoE抗体と反応し,18例で抗cysC抗体との反応がみられた.高齢者とアルツハイマー病の脳血管ではアミロイドは抗β蛋白およびApoE抗体と反応したが,抗cysC抗体との反応は認められなかった.電顕的検索では初期にはアミロイド線維が中膜の外膜側の平滑筋細胞周囲に沈着し,次第に中膜平滑筋細胞間に増加し,中膜を完全にアミロイド線維で置換することを明らかにした.免疫電顕的検索ではアミロイド線維には抗β蛋白抗体と反応した金コロイドの付着がみられたが,抗cysC抗体の付着は証明出来なかった.cysCはアミロイド線維の構成成分でなく線維間にアミロイド沈着後に付着し,そのために血管壁が脆弱となり破綻しやすくなった可能性が強いと考える.ApoEの沈着もβ蛋白が線維となった後と考えるが,脳皮質下出血の有無にかかわらず,高齢者やアルツハイマー病の脳血管にもみられ血管の破綻に必しも関与していないと考えられる.高齢犬の脳血管のアミロイドは抗β蛋白抗体のみと反応したが,Uchida等は前処理すると抗cysC抗体と反応すると報告しているので,更なる検討が必要である.
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