研究課題/領域番号 |
06670198
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
栄本 忠昭 名古屋市立大学, 医学部, 教授 (60140779)
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研究分担者 |
立山 尚 名古屋市立大学, 医学部, 講師 (80207068)
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キーワード | 胸腺 / 胸腺腫 / 紡錘細胞型胸腺腫 / 免疫組織化学 / サイトケラチン / Fas抗原 / 皮質型胸腺細胞 / 細胞増殖関連抗原 |
研究概要 |
1.昨年度来の胸腺腫および胸腺癌におけるアポトーシスの解析については、Fas抗原およびbc1-2蛋白の検索に加えて、TUNEL法によりアポトーシス細胞を可視化して定量した。症例数も増加し、非浸潤性胸腺腫11例、浸潤性/転移性胸腺腫8例、胸腺癌10例を対象とした。結果は、(1) Fas抗原発現は胸腺腫の細胞型との関連が示唆された。(2) bc1-2蛋白は胸腺腫で前例に陰性、胸腺癌では全例に陽性となり、両者の鑑別に有用であった。(3) TUNEL法によるアポトーシス細胞陽性率は非浸潤性胸腺腫と浸潤性/転移性胸腺腫とで有意差があった。これらの結果は第84回日本病理学会(平成7年4月)で発表した。 2.紡錘細胞型胸腺腫は臨床的に良性であり、重症筋無力症の合併は稀で、赤芽球癆を合併するなど非紡錘細胞型胸腺腫と異なる特徴を有する。本腫瘍の表現型を確定するため、上記Fas抗原の発現に加えて、各種サイトケラチン、CD1a、細胞増殖関連抗原(PCNA、MIB1)などを免疫組織化学的に染色し、非紡錘細胞型胸腺腫と比較した。その結果、紡錘細胞型は(1)比較的低分子量ケラチンに富み、(2) Fas抗原発現の頻度が高く、(3) CD1a陽性の皮質型リンパ球に乏しく、(4)腫瘍細胞増殖能は低いことが判明した。これらの結果は第85回日本病理学会(平成8年4月)で発表予定である。 3.胸腺上皮性腫瘍では早期にp53遺伝子変異が起こり、胸腺癌では顕著なp53蛋白の蓄積がみられることをAm J Clin Pathol誌上に発表した。この論文に関し「Letters to the Editor」の欄に「1mm以下の胸腺腫では異常p53蛋白は陰性ではないか」との投稿があり、これに対して、蛋白のみでなく遺伝子レベルでの解析の必要性と"microscopic thymoma"が胸腺腫の多段階発生における前腫瘍性病変である可能性を指摘して同欄で応答した。
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