1.あらかじめC-mycの増幅がわかっている大腸癌細胞株Colo320と、N-mycのわかっている神経芽細胞腫の培養株(C-mycの増幅が25倍及び50倍)を用いて、CHGを試みた。腫瘍から抽出したDNAをbiotin標識してprobeとし、それを単独で、あるいはdigoxygenin標識したcompetitor DNAの存在下で、正常リンパ球の染色体展開標本に対してhybridizeさせ、腫瘍DNAをFITC、competitor DNAをTRITCで検出した。その結果、神経芽細胞腫のN-myc50倍増幅のある株で、2番染色体の短腕に、Colo320では8番染色体の長腕に濃いFITC優位のバンドが見られた。また、神経芽細胞腫のlineにはlp-が核型から分かっているものがあり、それでCGHを行うと、lpのtipに近い部分のFITC蛍光が減弱しているのが確認できた。ただし、蛍光強度の比からコピー数の推定を定量的におこなうための、プログラムは現在は引続き開発中である。CGHからlp-のパタンがみれた神経芽細胞腫のcell lineで、lp36とcentromereを認識するrepetitive probesを組み合わせてdual color FISHを行ったところ、centromere signalのsize polymorphismのみられた一例でLOHが確認できた。 この方法を胃癌・大腸癌の新鮮組織に応用してこれらの癌で高頻度に異常の見られる染色体(の部分)の同定を試みるために、この一年間で、大腸癌23例、早期胃癌8例の同一病巣から複数箇所の新鮮材料とAmex固定材料を収集した。正常細胞のDNAの混入を最小限にするように、50μm程度の厚切り切片から実体顕微鏡下で腫瘍部分のみをmicrodissectした組織から細胞浮遊液を作ってDNAを抽出した。その際、どのくらい小さな組織からDNAを抽出できるかを検討するため、suspensionの限界希釈法を用いて、DOP-PCRを行った。その結果、腫瘍細胞核10から100個あればprobeにできる程度のDNAが得られることが分かった。次年度はこの方法で、いよいよ採取した原発腫瘍例でCGHの検索を重ねて行く予定である。
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