研究概要 |
前立腺癌と診断のついた症例で、手術的に全摘された前立腺組織を7例収集し,5mm間隔でスライスした後、全割標本作製による組織学的mappingを行い,癌遺伝子産物(rasp21,p53)などの免疫組織学的検索を行った。更に,これに対応する凍結前立腺組織を1症例について5〜10標本程度分割した後DNAを抽出した。その結果, (1)免疫組織学的評価 全割標本上におけるp53陽性所見は7例中2例であり、この2例は区分した領域の一部にのみ陽性を示した。組織学的に中分化型腺癌を示すところに認められるとともに、腫瘍が浸潤性に発育する部分に陽性を示すところが多かった。一方rasp21は全例ところどころ陽性を示し、特定の傾向は認められかった。 (2)ras遺伝子の活性化 7例中2例認められ、1例は全腫瘍5分画の1分画のみにK-ras codon13(CGG→CGA)の変異が認められ、他の1例はK-ras codon13(CGG→CGA)とcodon61(CAA→CTA)の2種類の変異が部位を変えて認められた。このことは前立腺癌のheterogeneityを考えあわせると、明らかにある特定の部位にこれらの変異が生じていることを示しており、今後行なうp53の所見とあわせ興味深い結果がえられるものと考えられる。
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