研究概要 |
前年度は基礎実験として,TCR-γ鎖のVγ・Jγ-regionのそれぞれ12ケと3ケのsegmentに対して,Aligaraら(Diagn Mol Pathol 3:275,1994)の方法に準じてVγに9ケとJγに3ケのprimerを設定し,さらにパラフィン切片に適合するように新たにinner primerをJγ側に作製したsemi-nested PCR法を試作し,その結果31例の皮膚T細胞性リンパ腫のうち15例において陽性所見が得られた.引き続いて本年度は陽性となったprimersのなかの有効なprimerの組み合わせを同定し得た1症例に対して,1組の有効なprimerによりパラフィン切片上にTCR-γ鎖のPCR増幅を行ない,さらに同一切片上でprimerの増幅する間に位置するoligonucleotideを標識してin situ同定を行なった.DAB発色,alkaliphosphatase発色のいずれでも核内にドット状の陽性所見が得られた(1995年日本癌学会で発表した). また,本年度はいままでに集積した皮膚および皮下に初発した末梢性T細胞性リンパ腫の自験208例のうち臨床的に明らかな自然消退現象のみられた4例について電子顕微鏡的・免疫酵素組織化学的・分子遺伝学的検索を行ない,cataclysmic apoptosis(Majno G,et al:Am J Pathol 146:3,1995)が自然消退現象に深く関与し,histologically malignant,clinically benignな病態を形成していたことを明らかにした(1995年日本網内系学会にて発表;Human Pathol,in press).ほかに,本邦では比較的稀なlymphoplasmacytoid typeのB-cell lymphomaの皮膚初発例の経過を追い,再発時に眼窩を侵す頻度の高いことを文献的にも確認した(研究成果の1;新井ほか:皮膚に初発し再発時に眼球侵襲をみたlymphoplasmacytic/lymphoplasmacytoid lymphoma.皮膚のリンフォーマ14:144,1995).
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