研究概要 |
非小細胞性肺癌(Non Small Cell Lung Cancer,NSCLC)の多くは抗癌剤に対して耐性であり、化学療法成績は十分ではない。特に、当初は抗癌剤に感受性であっても治療後に新たに耐性となる獲得耐性の機序は病理学的にも興味深い課題である。抗癌剤多剤耐性(Multidrug Resistance,MDR)現象を説明する機序として、多剤耐性遺伝子Multi-Drug Resistance 1(MDR1)遺伝子の過剰発現が注目されている。 本年度は薬剤感受性のヒトNSCLC株を用いて、in vivoで臨床治療相当量の抗癌剤投与による治療シュミレーションを行い、抗癌剤耐性獲得状況とMDR1/P-Gp遺伝子の発現量を経時的に観察した。またMDR1/P-Gp過剰発現を認めたNSCLC手術材料について、化学療法成績・転帰との関連および分化度、組織形等との関連を解析し、NSCLCのMDR機構を分子病理学的に考察した。【in vivo化学療法実験】薬剤感受性NSCLC-xenograftをヌードマウスに移植し、臨床治療相当量の抗癌剤治療を行いin vivoでの薬剤耐性現象の出現を把握し、同時にP-Gp・MDR1遺伝子の発現をWestem Blot法、免疫組織化学法、およびRT-PCR法で経時的に追跡した。【肺癌材料】集積した約100例の肺癌(NSCLC)材料における抗癌剤耐性関連遺伝子の発現を方法3-4で検討した。また、同時に臨床経過および転帰と化学療法反応性(腫瘍サイズ、増殖速度、遠隔転移)を解析した。【P糖蛋白発現】免疫組織化学法(抗P糖蛋白モノクローナル抗体:C219)を用いて、腫瘍株における細胞レベルでのP糖蛋白発現の検討を行なった。【MDR1遺伝子発現】RT-PCR法を用いMDR1遺伝子の発現を評価・半定量した。 本年度の研究の結果、NSCLC臨床手術材料およびヒトNSCLCヌードマウス移植Xenograftの抗癌剤多剤耐性現象において、MDR1遺伝子の過剰発現発現が、密接に関連していることが示唆された。また、MDR遺伝子発現による抗癌剤多剤耐性現象は高分化腺癌において明らかであった。
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