研究概要 |
抗原提示を行う代表的な樹状細胞としてランゲルハンス細胞と指状嵌入細胞の2種類が存在するが、その起源と特性についての確定的な結論は未だ得られていない。本研究は,ランゲルハンス細胞と指状嵌入細胞との相違点を検索し,免疫反応におけるそれぞれの役割を究明した上で,樹状細胞由来の疾病であるhistiocytosis Xの本態の追究を試み,研究成果を以下の様に投稿及び発表した。 1.全身網内系組織・臓器内のランゲルハンス細胞と指状嵌入細胞の分布及び動態について検討した結果,指状嵌入細胞は全身のリンパ・網内系組織に広く分布するが、ランゲルハンス細胞は扁平上皮組織及び扁平上皮に直接灌流するリンパ節に存在していることが明確になった。(Dendritic Cells6) 2.ランゲルハンス細胞の成熟は,実験的扁平上皮化生組織の進展に対応し,ケラチノサイトがBirbeck顆粒の成因とランゲルハンス細胞の形態及び数的変動に影響を及ぼすことが明らかになった。(日網内系会誌36,第7回日本樹状細胞研究会:浜松) 3.皮膚病性リンパ節症のランゲルハンス細胞と指状嵌入細胞の分布,出現比率及びその動態,histiocytosisXに認められる樹状細胞の同定と,これら2疾患における樹状細胞の増殖能を検討した。皮膚病性リンパ節症のリンパ節内樹状細胞は,増殖能力が極めて低いランゲルハンス細胞で,皮膚から表在リンパ節に移行してきたものと考えた。Histiocytosis Xに出現していたランゲルハンス細胞は,高い増殖能力を示し,CD4も陽性であることから,histiocytosis Xは抗原性や表面マーカーを逸脱した免疫学的特性をもったランゲルハンス細胞の反応性異常増殖疾患であると推測した。(化療の領域12, pathol.Int.46) 4.いしばしヘアレスラットは,ヒトの皮膚病性リンパ節症に極めて類似した病態を示すことによりそのモデル動物として,あるいはケラチノサイトの増殖とランゲルハンス細胞の成熟・移動を観察するモデル動物として有用であると考えた。(第85回日病理総会: 東京,第36回日網内系総会:名古屋, 4th Int.Workshop on Dendritic Cells : Venice)
|